ネタ蒔き時

ネタ蒔き時の枕草子 第十二話「チュウチュウ狂騒曲」
私は若い頃にファーストフード・チェーン店でアルバイトをしていた事がある。ある日の事、私は倉庫の整理をする事になった。山のように積み重なったバンズやドリンクをかき分け掃除をしていると、目の前を突然黒い影が横切ったのだ。どこから入ってきたのか、丸々と太ったそのネズミはまるでこの倉庫の主であるかの如くアチコチを食い散らかしており、私の悲鳴を聞きつけた仲間たちが集まるまでに時間はかからなかった。その後、店で猫を飼うべきだと主張する私を宥めていた店長の顔は今も記憶に新しい。
さて、このようにネズミというものは飲食店にとって非常に厄介な存在だ。商品を台無しにするだけでなく疫病ももたらす。こちらがどんなに頑張って駆除しようともどこからともなく湧き続ける極めて厄介な存在だ。
そしてそんな厄介な存在は、マジックの世界においても何ら変わりはない。
今日紹介するデッキはそんな「厄介な」デッキとして一世を風靡したアレだ!
黒単信心
- 4《群れネズミ/Pack Rat》
- 4《才気ある霊基体/Gifted Aetherborn》
- 4《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》
- 2《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》
- 4《ファイレクシアの抹消者/Phyrexian Obliterator》
- 3《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》
- 2《思考囲い/Thoughtseize》
- 3《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
- 4《致命的な一押し/Fatal Push》
- 4《密輸人の回転翼機/Smuggler's Copter》
- 2《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
- 4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
- 20《沼/Swamp》
正直に告白しよう。ラヴニカへの回帰で初めて《群れネズミ》を見たとき、よくあるファンデッキ用のカードだと見向きもしなかった。しかしそれは間違いだった事がプロツアーの場で証明された。《群れネズミ》は一夜にしてストレージの肥やしからスタンダードのモンスターへと変貌し、以後のスタンダードはこの小さなネズミによって定義づけられる事となった。
そんな象徴的なデッキをモダンバージョンに改造したものがこの黒単信心だ。《群れネズミ》と《アスフォデルの灰色商人》の二枚看板はそのままに、モダンらしいエッセンスが加えられている。《ゲラルフの伝書使》と《ファイレクシアの抹消者》は共に時代に恵まれずそこまで大きな活躍はしなかったが、その圧倒的なカードパワーと「黒らしさ」は多くのファンの心を鷲掴みにして離さない。《才気ある霊基体》は最新セットからの刺客で、盤面を掌握しつつ《思考囲い》で失ったライフをリカバリーしてくれる。スタンダードでは禁止の憂き目にあった《密輸人の回転翼機》もモダンでならその圧倒的なパワーを存分に発揮してくれるだろう。《ヴェールのリリアナ》でなく《最後の望み、リリアナ》が採用されているのが不思議に感じるかもしれないが、マイナス能力で《ゴブリンの太守スクイー》を墓地に落としつつ《アスフォデルの灰色商人》を回収する所を想像してみてほしい。きっと大きなときめきを覚えるはずだ。そうそう、《ゴブリンの太守スクイー》は《群れネズミ》や《密輸人の回転翼機》で捨てるだけでなく、時には普通にプレイして永続的なブロッカーとしても使えるという事を忘れずに。
サイドボードに関してはいつも通り割愛しよう。エンダルゲームスで販売されているデッキにはサンプル用のサイドボードが付属しているので、最初はそれを試してみて、その後は自分の周りに併せて改造してみてくれ!
今週はここまでだ。みんなが在りし日の黒単を堪能してくれたのならデッキ紹介者冥利につきるね!
次回は単色つながりという事で、当時黒単信心と双璧を成した「あのデッキ」をフィーチャーしようとおもう。
その日まで、あなたの家の倉庫が荒らされませんように。