ネタ蒔き時
ネタ蒔き時の枕草子 第十八話「ドローの小話」
ドローカードを打つ時の気持ちよさは独特だ。《死儀礼のシャーマン》とも《真の名の宿敵》とも違う個性的な快感がある。私が思うに、これは「安心」が得られる事による快感なのだろう。第一ターンに《死儀礼のシャーマン》を唱えるとき、その胸中には期待と不安が入り混じる。シャーマンは無事に帰ってくるだろうか?墓地が枯渇する事はないだろうか?もしかして《コラガンの命令》で2対1交換を取られてしまわないだろうか?《死儀礼のシャーマン》がもたらす大きなリターンを認識していてもなおこのような不安は常に付きまとう。それに対してドローカードを唱えた先にあるのは「安心」だ。何か特定のカードが欲しいとき、ただ1枚ドローするよりも《思案》した方が何倍も安心できる。手札が土地だらけであっても《渦まく知識》があれば恐らく何とかなるだろうという安心感は他に代えがたい。それ自体は盤面に何の影響も与えないが、それがもたらす安定感・安心感は何物にも勝る甘美な味わいだ。今回はそんなドローカード達のちょっとした小話をしよう。
1.《渦まく知識》を使うなら土地は多い方が良い
《渦まく知識》については数多くの文献があり、より効率的に使うにはどうすれば良いか日夜研究がなされているのは読者の皆もご存じだろう。レガシーを代表する屈指のパワーカードでありながら、使い方次第で《Ancestral Recall》にも並のカードにもなりうるのが《渦まく知識》の魅力だ。そんな《渦まく知識》だが、もっともベーシックな使い方と言えば「不要牌を2枚戻してシャッフルする」事だろう。実際8割ぐらいはこの使い方をするはずだ。そしてこの動作にはフェッチランドの存在が不可欠であり、さもなくばただのキャントリップになってしまう。手札にすでにフェッチランドがある状態ならばそんな不安はないが、フェッチの無い時に唱える《渦まく知識》には常にこのリスクが付きまとう。そして忘れられがちだがフェッチを切るという事は次ターン以降マナが伸びている状態が必ず訪れるという事だ。手札に土地が無い場合、戻す2枚はその時プレイできない高コストのカードになるだろう。しかし《渦まく知識》を唱えた事でマナベースが伸び、戻した高コストカードを再び欲するという一種のジレンマになってしまう。三枚目の土地を求めた《渦まく知識》で《精神を刻む者、ジェイス》を戻すか否かという状況は何時だって悩ましいものだ。その一方で土地だらけの時に打つ《渦まく知識》は素晴らしい。シャッフルするためのフェッチには事欠かず、戻すカードに苦悩する事もない。他に使えるカードが無いのだから失われるテンポもないし、そもそも土地に余裕があればあるほど引いてきたカードを即座に使うことが出来る。まとめると、土地を探すための《渦まく知識》は「フェッチを切れないリスク」と「伸びたマナで使いたいカードを戻す事によるプレイングの不合理」を抱えた危ないプレイである一方で呪文を探すための《渦まく知識》にはそのリスクが無い。少しだけデッキの土地配分を多めにしておく事が《渦まく知識》をより強く使うためのコツなのだ。
2.《思案》するのは他のカードを使い切ってから
ドローカードは安心感を与えてくれるのでついついすぐに打ちたくなってしまうが、盤面に影響を与えないカードである事を忘れてはいけない。他に出せるカードがあるのにドローを優先してしまうと相手に盤面を掌握され、せっかく引いたカードを使い切る前に負けてしまう事だろう。なのでそのターンに取れる行動があるのならばそちらを優先させ、ドローは出来るだけ後回しにした方が良い。ただ対戦相手がコンボデッキであり、可及的速やかに《意志の力》を探す必要がある時などはすぐに唱えるべきだね。
3.3ドローは2ドローの1.5倍ではない
カードを三枚引くカードは大抵強力なものだ。偉大なる《Ancestral Recall》を祖に、《行き詰まり》《集中》《祖先の幻視》といったカード達はどれも環境でひっぱりだこだった。最近で言えば《苦い真理》もこの仲間だろう。《紅蓮破》されないアドバンテージソースとしてレガシーで活躍している頼もしいやつだ。一方カードを二枚引くカードは三枚引くカードに比べ今一つパッとしない。《夜の囁き》や《血の署名》は良いカードだったが、前述したカード達ほどのインパクトがあったかと言われると難しい所だ。なぜこれほどまでに差があるのかと言うと、3ドローと2ドローの効果量とコストが釣り合ってないからだ。カードを3枚引くとは手札を2枚増やす事であり、カードを2枚引くとは手札を1枚増やす事であるため、見かけとは異なり実際の効果には二倍の差がある。にも関わらず、コスト面では3ドローは2ドローのおよそ1.5倍のコストである事が多い。《苦い真理》一回分のアドバンテージを得るためには《夜の囁き》を2回唱える必要があるが、そのためにはより多くのマナを(そしてライフも!)要求されてしまう。勿論単純なドロー枚数とコストとの割合だけでカードの強さを語る事は出来ないが、《祖先の幻視》ほどのインパクトもなく《思案》ほどの取り回しの良さも無い2ドローはどうしてもハンパな立ち位置になってしまうのだ。しかしそんな2ドロー業界にも吉報がある。イクサランで登場した《航路の作成》は中々悪くない性能だ。強襲達成はそこまで難しくないし、達成していなくてもそう捨てたものではない。青の2マナの《目録》はありそうで無かったカードだしね。
さて、ドローの小話はこれぐらいにしておこう。ドローするのは何時だって楽しいものだ。ドローしたいがためにマジックをやっているという人はたくさんいるだろうし、何を隠そう私もその一人だ。この記事がみんなの素敵なドローライフの一助となってくれたのならうれしいね!
それではまた次回、除去カードの小話でお会いしよう!